概要
リップル(Ripple、通貨単位:XRP)は、送金・決済の高速化を目的として開発された暗号資産である。
主な目的は、国際送金における時間とコストの大幅な削減であり、既存の銀行送金ネットワーク(SWIFT)に代わる仕組みを提供することにある。
発行の背景と目的(詳細年表)
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2011年 | 開発者ライアン・フガー(Ryan Fugger)が「RipplePay」構想を提唱。個人間信用ネットワークの発想が原型となる。 |
| 2012年 | ジェド・マカレブ、クリス・ラーセンらがOpenCoin社(後のRipple Labs)を設立。XRP Ledgerの開発を開始。 |
| 2013年 | XRP Ledgerが正式公開。PoWを使わない独自合意アルゴリズム(RPCA)を採用。 |
| 2014年 | OpenCoinがRipple Labsに改称。複数の銀行と国際送金テストを開始。 |
| 2015年 | 米FinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)からコンプライアンス指摘を受け、規制対応を強化。 |
| 2016年 | 日本のSBIホールディングスと提携、「SBI Ripple Asia」を設立。アジア市場進出を本格化。 |
| 2017年 | RippleNetが正式始動。Santander、American Expressなど大手金融機関が試験導入。 |
| 2018年 | ODL(On-Demand Liquidity、旧xRapid)を発表。XRPを用いた即時流動性提供を実現。 |
| 2019年 | 送金企業MoneyGramと提携し、XRPを利用した国際送金を開始。 |
| 2020年 | SEC(米証券取引委員会)による提訴(XRPが未登録証券との主張)。訴訟問題が発生。 |
| 2021年 | 「ヒンマン文書」開示を要求し、ETHとの比較を法的争点に。防衛姿勢が注目される。 |
| 2022年 | RippleNet参加機関が100社を超える。欧州・中東地域で送金実用化が進む。 |
| 2023年 | 米連邦地裁が「一般投資家への販売は証券に該当しない」と判断。部分的にリップル社が勝訴。 |
| 2024年 | ブラジル・UAEなどで国際送金ネットワークを拡大。金融インフラ連携を深化。 |
| 2025年 | XRP Ledgerのアップデートにより、スマートコントラクト機能「Hooks」導入が進展。 |
仕組みと技術的特徴
リップルはビットコインやイーサリアムのようなマイニングを行わない。
全XRPは初期に1000億枚が一括発行され、その一部をRipple社が保有・市場供給している。
コンセンサスアルゴリズム:Ripple Protocol Consensus Algorithm(RPCA)
-
ノード(検証者)が定期的に台帳内容を照合し、合意を形成する。
-
PoWのような計算競争がなく、処理速度が速く、消費電力も小さい。
-
平均処理時間は数秒、1秒あたり最大1500件の取引を処理できる。
XRP Ledgerの特徴
-
オープンソースでありながら、検証ノードは信頼リスト(UNL:Unique Node List)に基づいて選定される。
-
中央集権的な側面を持ちつつも、改ざん耐性と透明性を維持している。
リップルネットワーク(RippleNet)
Ripple社は、銀行・送金業者向けに「RippleNet」という送金ネットワークを提供している。
このネットワーク上では、異なる通貨間の即時送金が可能で、XRPはその中継資産(ブリッジ通貨)として機能する。
主な機能
-
xCurrent:銀行間決済メッセージングシステム
-
xRapid(ODL):XRPを利用して即時流動性を提供
-
xVia:異なる金融機関システムを接続するAPIインターフェース
日本における展開とSBIグループの関与
日本では、SBIホールディングスがリップル技術の普及に最も積極的な企業グループとして知られている。
2016年にRipple社と合弁でSBI Ripple Asiaを設立し、アジア太平洋地域の金融機関を対象にRippleNetの導入を推進してきた。
主な取り組み
-
SBIレミット:東南アジア諸国への国際送金にRippleNet技術を採用。
-
住信SBIネット銀行・SBI証券:国内外の資金移動基盤にXRP技術を応用。
-
SBI VCトレード:XRPの取扱いを早期から実施し、国内流通を支援。
-
株主優待制度:2022年以降、一部年度でXRPを株主優待として付与。暗号資産を実需ベースで提供した先駆的事例。
SBIグループの北尾吉孝CEOは、Ripple社の出資者でもあり、アジアにおけるXRPエコシステムの拡大を戦略的に支援している。
日本市場では、リップルが「実用性の高いブロックチェーン技術」として早期に受け入れられた背景には、このSBIの推進力が大きいといえる。
リップル訴訟(SEC vs Ripple)の概要
リップル社は2020年12月、米国証券取引委員会(SEC)から「XRPは未登録証券として販売された」として提訴された。
この訴訟は、暗号資産が証券に該当するか否かをめぐる初の本格的な裁判として、業界全体に大きな影響を与えた。
2023年の米連邦地裁の判断では、
-
一般投資家への取引所販売は証券に該当しない
-
一方で、機関投資家への直接販売は証券に該当する
とする部分的なリップル社勝訴の結論となった。
この判決により、暗号資産の販売形態によって法的評価が異なることが示され、今後の規制議論の重要な前例となっている。
まとめ
リップル(XRP)は、ビットコインのような「分散的通貨」ではなく、国際送金のための実用的な決済プロトコルとして設計された暗号資産である。
高速性・低コスト・安定性に優れ、既存金融機関との連携を前提とした点に特徴がある。
特に日本では、SBIグループを中心に商用利用が進み、アジア圏で最も現実的なブロックチェーン活用モデルとして注目されている。
今後は、訴訟問題の収束とともに、グローバルな資金移動インフラとしての地位がさらに強化されることが期待される。

0 件のコメント :
コメントを投稿